生まれ変わってもまた、何度でも恋をはじめよう。
「なんで三時間なの?」
「知ってるか?
人間が他人を理解するには
一日三時間もあれば十分なんだ。
それ以上は逆に歪んだ認識をする。
でも三時間以下では不十分。
俺がお前という人間を理解するにも三時間。
お前が俺という人間を理解するにも三時間。
一日二十四時間のうちの三時間で
他人を少しずつ理解出来る。すっげぇ得じゃね?」
ええと……これは損得の話なの?
正直何が得なのか全然分からない。
そもそもこの人を知りたいとも思わないし、
私を知ってほしいとも思わないよ。
そんな私にとってはその三時間、
どちらかと言えば損なのでは?
急にふっと、私の腕を掴んでいる手の力が緩んだから、
軽く振り払うと彼の手から逃れることが出来た。
掴まれていた腕をさすって彼を見る。
彼は私を少しの間見つめていたけれど、
ベッドの脇に置いてある丸椅子に腰かけた。
「きっかり三時間な。はい、スタート」
スマホをいじっていたかと思えばそんなことを言い、
私にスマホの画面を見せた。
タイマーが動き出していて、
残り時間が表示されている。
彼はスマホを床頭台に置くと、
カバンから一冊の文庫本を取り出して黙々と読み始めた。