死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
でも、そこで疑問が浮かんだ。


小池先生の言うことが真実なら、魂は6つあってもおかしくないはずだ。


だけど、バスケ部の部室ですすり泣いている霊はユキオさん1人だけだ。


これはどういうことなんだろう?


厚彦も疑問を感じているようで、真剣な表情で腕組みをしている。


「あ、あの。このユキオさんはどんな生徒さんだったか、覚えていますか?」


昔のことだから忘れているかもしれない。


そう思いながらも、梓は質問をした。


「あぁ……。この子は練習熱心な子だったよ。授業態度も良かったみたいで、他の先生からの評判も悪くなかった」


小池先生は過去を振り返り、懐かしむような口調になった。


無理やり思い出そうとしている雰囲気ではないから、本当に思い出してくれたんだろう。


「他に、なにかありませんでしたか?」


梓の問いかけに小池先生は首をかしげた。


「この子は目立つ生徒じゃなかったからね。特に問題児でもなかったし……」


「そうですか」


良くも悪くも、ユキオさんへの印象はそれほど強いものじゃなかったみたいだ。


結局、小池先生から聞き出すことができた情報は25年前のバス事故のことだけだった。


ユキオさん本人に関する情報は、勉強も練習も頑張っていたということくらい。


「今日はありがとうございました」


ファミレスを出る前に梓と玲子、ついでに厚彦は小池先生に礼を言った。


小池先生は来たときと同じような優しい笑みを浮かべて「またいつでも呼んでいいから。今日は楽しかったよ」と、言ってくれたのだった。
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