死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
「ちょっと、トイレ」


梓は短く言うと、教室からかけだした。


不覚にも涙があふれてきていた。


どうしてこんなに胸が苦しいんだろう。


どうして成仏しないでって思うんだろう。


ジワリとあふれ出した涙が止められなかった。


トイレの個室に駆け込んで鼻をすする。


「告白の手伝いなんて嫌……」


涙声で呟いた。


もう、認めるしかない。


この短い期間で、厚彦が死んでしまった後で、自分は厚彦を好きになってしまったのだ。


それは絶対に叶うことのない恋。


いつか終わりが来るとわかっていた恋。


それでもこの時間がいつまでも続くような気がしていたのだ。


厚彦に振り回されながら、学校内にいる霊を成仏させる。


そんな毎日が、いつまでも……。
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