死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
厚彦は心配そうに女子生徒を視線で追いかけている。


(好きな子がいるのに、どうしてあたしの前に現れたの?)


梓の気持ちに関係なく、厚彦の足が女子生徒へと近づいていく。


(最初から、その子のそばに現れればよかったじゃん)


厚彦が女子生徒に声をかける。


(もう、いや……!)


思いっきり目を瞑りたいけれど、それも許されない。


追体験は残酷に梓に真実を伝えてくる。


厚彦は女子生徒からダンボールを奪うようにして、受け取った。


その影から出てきた女子生徒は驚いたように目を丸くする……梓だったのだ。


(え、あたし!?)


「これだけの荷物を一気に運ぶなんて無謀だなぁ。誰か手伝ってくれなかったのかよ」


厚彦は呆れた声を出している。


過去の梓は照れ笑いを浮かべて「ごめんね。ありがとう」とほほ笑む。


その瞬間、梓は自分の中にも同じ記憶があることを思い出していた。


(そうだった。これは確か1年生のころのことだ)


先生から頼まれた教材を教室まで運んでいた梓だが、まさかここまで重たいとは思っていなかったのだ。


厚彦の言うように無謀だった。


重たすぎて、ちょっとどうしようかと悩んでいた時に声をかけてくれた男子生徒がいる。


それが、厚彦だったのだ……。
< 327 / 338 >

この作品をシェア

pagetop