死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
「厚彦の姿はあたしにしか見えてないんだよ? それなのにあんなことして!」


「あ~、そう言えばそうだったな。あの坊さんですら俺のこと見えてなかったもんなぁ」


木魚と一緒に頭をポクポク叩かれていたのに気がつかなかったくらいだ。


あのお坊さんには霊感がなかったのだろう。


「だから、あたしがひとりでしゃべってたり、あたしがひとりで笑ったりしてたら、変な人になっちゃうの!」


「それもそうだなぁ。でも、会話できないと俺孤独だしなぁ」


厚彦は両手を頭の後ろで組んで言う。


そう言われればそうかもしれない。


今のところ厚彦の姿が見えるのは梓だけなのだ。


その梓と会話ができないとなれば、辛いかもしれない。


「とにかく、学校内で会話するのは無理だからね」


(それに、葬儀が終われば厚彦もいなくなるんだろうし)


そう思った瞬間チクリと、胸に痛みが走って梓は目を見開いた。


(今の痛みはなに?)


まさか、厚彦の別れが辛いとか?



自分でそう考えておいて、ブンブンと強く左右に首を振ってその考えをかき消した。


(そんなことありえない! ただせさえ迷惑してるんだから!)


梓は自分に言い聞かせて、2年A組へと戻ったのだった。
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