死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
挨拶されたから挨拶し返したものの、この状況はどう考えてもおかしい。


どうして厚彦がここに?


お風呂に入る時に戸じまりはしっかり確認したはずだし。


まさか、どこかカギが開いていたとか?


だとしても、勝手に家に上がりこんでベッドの下に隠れるとか、ありえないでしょ!


そんなことをグルグルと考えていると、厚彦が申し訳なさそうな表情のまま「ごめん。まさか俺の姿が見えるとは思わなかったんだ」と言った。


「見える……?」


厚彦の言葉の意味が理解できなくて梓は首をかしげる。


とにかく、今の状況はまずい。


両親が旅行に行っている間に男を連れ込んだと思われてしまう。


「と、とにかく、外へ出てくれない?」


梓がそう言った時、厚彦はどこか悲しげな表情で左右に首を振った。


「悪いけど、それはできないんだ」


「え?」


「俺、もう死んだみたいなんだ」
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