死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
☆☆☆

見えない幽霊を成仏させるなんて絶対に無理!


だってあたしには霊感なんてない。


厚彦の姿はどうしてだか見えるけれど、ただそれだけ。


「なぁ、イエスかノーの返事くらいしてくれよぉ」


授業中だと言うのに、厚彦は梓に話しかけていた。


梓の机の前に逆さまになってふよふよ浮いているのもだから、集中できるわけもない。


でも、梓は厚彦の言葉を無視し続けていた。


厚彦が邪魔で黒板は半分以上隠れているけれど、堅命にノートに書き写している。


「カナちゃんがかわいそうだと思わないのかよ? 見たところ、ずいぶん昔の制服だったんだぜ? そんなに昔からとどまってるなんて、かわいそうだろぉ?」


確かにかわいそうだと思っている。


だけど、自分にできることなんてなにもない。


だって、梓には霊感なんてないんだから。
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