死んだ彼が幽霊を成仏させてみせます!?
厚彦の言葉に梓はキョトンとして目を見開いた。


この人は一体なにを言ってるんだろう?


厚彦は間違いなく今目の前にいるし、さっき梓の口をふさいだから手でなにかに触れることもできる。


梓の知っている幽霊とは程遠い存在だった。


「あのね、こんな夜に人の部屋に忍び込んで、笑えない冗談を言うのはやめてくれる?」


梓は盛大な溜息とともに言った。


しかし、厚彦は頭をかいて「困ったなぁ」と呟いている。


「とにかく、早く部屋から出て行ってよ」


強行突破しようと、梓が厚彦の手を取る。


その瞬間……スカッ!


厚彦の手を握り締めようとしたのに、それはどこにも触れることなく空を切った。


(え……?)


梓は目をパチクリさせて自分の手と厚彦の手を見比べる。
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