これは僕と彼女の軌道
 雨は降っていないが、空は灰色の雲に覆われてどんよりとしている。

「おはよー。歩」

「おはよ」

 翌日、父さんと一言も交わさないまま登校した。

「お前、なんかあったか?」

 気持ちは未だささくれていて、龍也はそれを感じ取ったのだろう。こいつ案外鋭し、付き合いが長いからな。

「また、おじさんと喧嘩でもした?」

「…」

 図星だったので押し黙る。

 龍也は強く俺の背中を叩いて、「まー、元気出せ。放課後、憂さ晴らしにどっか寄り道しよ。なんだったら奢るぜ」と励ます。

 普段はうざいやつだけど、けっこうこいつの明るさには救われているんだよな。
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