これは僕と彼女の軌道
砂浜の空いているスペースを確保した。海へ行くには少し距離があるが、近くに更衣室やロッカーが設置されている。
僕ら男性陣はビーチパラソルの組み立て、暦さんはレジャーシートを敷いている。
「ふぅー…こんな感じかな?」
ビーチパラソルの角度を調整しながら、レジャーシートの上に立てかけた。
根本を固定している龍也も「上上じゃね」と頷く。
一段落がついたところで、更衣室で水着に着替えようと持ってきた荷物に手をかける。
すると暦さんは人目もはばからず、衣服を手をかけた。パーカーのチャックを下ろし、ショートパンツを下げる。
「ちょっ!きみ!」
制止をかけるが、衣服の下には黄色い花柄の水着を着ていた。
いくら水着を着ていても、公衆面前で衣服を脱ぎ捨てるなんてはしたない。しかも、直ぐ側には男子2人だ。水着姿の女子に気が休まらないわけがない。
「いくら下に着ていたとはいえ、女の子なんだから恥じらいは持つべきじゃないかな?その上きみは財閥のお嬢様でしょ」
突発的な行動に翻弄されるこちらの身にもなってほしい。
嫌味を含んだ指摘に、彼女は周囲の状況を確認しているようで首を右往左往と振る。
「あっ、そうだ。今日は友だちと別の海に来たんだ」
また海へ遊びに来たことを忘れていたようだが、『別の』という発言が気になる。
「ごめん。海見たら、てっきり海のプライベートビーチかと思って、いつもの調子で飛び込もうとした」
『プライベートビーチ』って!改めて暦さんの家が飛び抜けて金持ちであることを痛感した。
やっぱり僕と彼女では住む世界が違うな。でも、所有しているビーチで普段から服を脱いで飛び込むなんて。こういう品行方正さに欠けた行動が、その事実を忘れさせる要因になっているんだろうな。
彼女の豪快なところに倦厭していると、「それにしても、私のこと女の子として見てくれているんだ」などと無邪気な顔を見せる。
性格から考えて他意はないなだろうけど、さっきの嫌味を返された気分だ。
彼女に限らず、クラスの女子生徒を女の子扱いしてないからな。プライベートで女子と一緒に出かけたことがないから、やり方すらわからずにいる。そもそも、女子に興味のなかった僕が、水着を着た女性を見てそわそわするなんて。彼女じゃなかったら、きっと気にも留めていなかっただろう。
彼女に対する邪な感情に気付いて、1人胸の内でヤキモキしていた。
すると龍也が「ごめんな。暦ちゃん。こいつ今まで女子の友だちいなかったから、女の子の扱い方いまいちわかってないの」と僕の肩に腕を回す。
僕が考えていたことほぼ等しい。
前にも行ったが、付き合いが長い分誰よりも僕の思考を見抜く。本音を表に出すことが下手な僕が何か抱えているとき、先に言い当ててくれる。
そうやって龍也はガス抜きをしてくれていた。だが、最近のこいつはその能力を僕を揶揄う目的で使用している。
今だって看破した僕の思考をわざわざ口にした。
「でも、安心して。歩は暦ちゃんのことを女の子として認識しているよ」
ますます調子付く。
振り回されるのは暦さんだけで十分なのに、龍也の相手までしてられるか。
やけくそ気味に龍也の腕を突き放す。
「僕らも早く着替えよう。暦さん見ていないといけないから、龍也が先に着替えてきて」
大川さんから彼女に目を離さないでほしいと頼まれた。今日はSPもいないからな。
「歩が行けよ。俺も下に着てきたから、ここで脱ぐ」
ん?ってことは、実質着替えていないのは僕だけ?
「安心して。歩が着替えている間は俺が暦ちゃんのこと見てるから。でも、急げよ。じゃないと暦ちゃん取っちゃうぞ」
龍也はいつまでも僕が彼女へ説教的にアプローチをしないことを気にして、わざと煽っている。
龍也が水着を下に着てなかったとしても、僕が着替えている間は絶対2人きりだということは変わらない。
でも、今の煽り立てる発言は、僕の心はシワのない紙をクシャシャに丸めたように整わなくさせた。
僕は落ち着かない感情を整理したくもあって、更衣室へ急ぐ。
僕ら男性陣はビーチパラソルの組み立て、暦さんはレジャーシートを敷いている。
「ふぅー…こんな感じかな?」
ビーチパラソルの角度を調整しながら、レジャーシートの上に立てかけた。
根本を固定している龍也も「上上じゃね」と頷く。
一段落がついたところで、更衣室で水着に着替えようと持ってきた荷物に手をかける。
すると暦さんは人目もはばからず、衣服を手をかけた。パーカーのチャックを下ろし、ショートパンツを下げる。
「ちょっ!きみ!」
制止をかけるが、衣服の下には黄色い花柄の水着を着ていた。
いくら水着を着ていても、公衆面前で衣服を脱ぎ捨てるなんてはしたない。しかも、直ぐ側には男子2人だ。水着姿の女子に気が休まらないわけがない。
「いくら下に着ていたとはいえ、女の子なんだから恥じらいは持つべきじゃないかな?その上きみは財閥のお嬢様でしょ」
突発的な行動に翻弄されるこちらの身にもなってほしい。
嫌味を含んだ指摘に、彼女は周囲の状況を確認しているようで首を右往左往と振る。
「あっ、そうだ。今日は友だちと別の海に来たんだ」
また海へ遊びに来たことを忘れていたようだが、『別の』という発言が気になる。
「ごめん。海見たら、てっきり海のプライベートビーチかと思って、いつもの調子で飛び込もうとした」
『プライベートビーチ』って!改めて暦さんの家が飛び抜けて金持ちであることを痛感した。
やっぱり僕と彼女では住む世界が違うな。でも、所有しているビーチで普段から服を脱いで飛び込むなんて。こういう品行方正さに欠けた行動が、その事実を忘れさせる要因になっているんだろうな。
彼女の豪快なところに倦厭していると、「それにしても、私のこと女の子として見てくれているんだ」などと無邪気な顔を見せる。
性格から考えて他意はないなだろうけど、さっきの嫌味を返された気分だ。
彼女に限らず、クラスの女子生徒を女の子扱いしてないからな。プライベートで女子と一緒に出かけたことがないから、やり方すらわからずにいる。そもそも、女子に興味のなかった僕が、水着を着た女性を見てそわそわするなんて。彼女じゃなかったら、きっと気にも留めていなかっただろう。
彼女に対する邪な感情に気付いて、1人胸の内でヤキモキしていた。
すると龍也が「ごめんな。暦ちゃん。こいつ今まで女子の友だちいなかったから、女の子の扱い方いまいちわかってないの」と僕の肩に腕を回す。
僕が考えていたことほぼ等しい。
前にも行ったが、付き合いが長い分誰よりも僕の思考を見抜く。本音を表に出すことが下手な僕が何か抱えているとき、先に言い当ててくれる。
そうやって龍也はガス抜きをしてくれていた。だが、最近のこいつはその能力を僕を揶揄う目的で使用している。
今だって看破した僕の思考をわざわざ口にした。
「でも、安心して。歩は暦ちゃんのことを女の子として認識しているよ」
ますます調子付く。
振り回されるのは暦さんだけで十分なのに、龍也の相手までしてられるか。
やけくそ気味に龍也の腕を突き放す。
「僕らも早く着替えよう。暦さん見ていないといけないから、龍也が先に着替えてきて」
大川さんから彼女に目を離さないでほしいと頼まれた。今日はSPもいないからな。
「歩が行けよ。俺も下に着てきたから、ここで脱ぐ」
ん?ってことは、実質着替えていないのは僕だけ?
「安心して。歩が着替えている間は俺が暦ちゃんのこと見てるから。でも、急げよ。じゃないと暦ちゃん取っちゃうぞ」
龍也はいつまでも僕が彼女へ説教的にアプローチをしないことを気にして、わざと煽っている。
龍也が水着を下に着てなかったとしても、僕が着替えている間は絶対2人きりだということは変わらない。
でも、今の煽り立てる発言は、僕の心はシワのない紙をクシャシャに丸めたように整わなくさせた。
僕は落ち着かない感情を整理したくもあって、更衣室へ急ぐ。