これは僕と彼女の軌道
 お手洗いを済ませると外から花火が上がる音がした。

「もう始めちゃったか」

 急いで戻ろうとすると、廊下の向こうから暦さんがやってきた。

「暦さん。どうしたの?」

「歩くんがいなかったから、探したの」

「えっ…」

 僕がいなくて心配してくれたのだろうか。

 わざわざ僕探してくれたことに高揚感を覚える。

「早く戻ろう。何をやっているのか忘れたけど、綺麗なことだったはずだよ。早くしないと終わっちゃうよ」

 僕の手を引こうとした彼女は途中で何か閃いたような顔をすると、方向を変える。

「そっちは庭先に通じているのかい?」

 庭には向かっているわけではなさそうだが、広くて屋敷の構造を理解し切れていないから、一応尋ねてみた。

 彼女は「いいから。いいから。気にしなで付いてきて」とますます僕の腕を強く引っ張って行く。
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