Romantic Mistake!

「これ、すぐに必要なものなんですか?」

『……もう、どうにもなりませんから……今すぐ新千歳まで飛んでも、それから東京へ戻っては間に合わないので……ゆっくりでいいです、サービスカウンターへ預けてもらえますか。お手数おかけします……』

死にそうな声でブツブツとそう言った彼は、思い出したように『あぁ! それで、あなたの荷物はどうしましょう』と叫んだ。大丈夫だろうか。

私の荷物はいいとして。SNSで噂のジェントルマンが自分のことで精一杯になるほど、この原稿は大切なものだったらしい。あんなに急いで東京に持ち帰ろうとしていたんだもの。今すぐ必要。そうか、今すぐか……。

私は通話を繋げたまま、カウンターのお姉さんのもとへ走る。

「すみませんっ! 羽田行きで一番早いの乗りたいんですけど」

カウンターにかじりついてそう伝えると、お姉さんは「はい」と返事をして冷静にコンピューターをタップし始める。
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