Romantic Mistake!
『ご旅行なのに、羽田へ引き返してくださるんですか……? ほ、本当に……?』
「もちろん! あなたの書類が最優先です」
極秘原稿をなにに使うのかは知らないが、御曹司なのにこれをがんばって運んでいた桜庭さんに同情した。うちのボスだったら絶対に、小間使いの私に取りに行かせただろう。だから他人事とは思えなくて、放っておけない。
『仁科さん……』
「で、どこへ行けばいいんですか!?」
『いえ、こちらから羽田空港へ迎えに行かせていただきます!』
「落ち合っている時間がもったいないです! 急いでいるんでしょう? さあ、どこ! 桜庭さんは今どこにいるんですか!?」
彼は電話の向こうで言葉を詰まらせながら、やっと私に助けを求めるように叫んだ。
『ベリーヒルズビレッジ……!』
オッケー!と心の中でそう返事をし、ちょうどゲートに到着したため通話を切った。
待っててください桜庭さん。あなたの大切な荷物、絶対に間に合わせてみせます。