Romantic Mistake!
ふたりの視線がこちらへ注がれ、私はいきなりのご指名に驚いて「わ、私?」と自分を指差す。
「ええそうです、仁科麻織さん。三連休に北海道へひとり旅。おそらく結婚もしていなければ恋人もいないでしょう」
「なっ」
なんて失礼な! その通りだけど……。
「図星なら引き受けてくれませんか。あなたは先ほどから見ていると、位置取り、食べ方、座り方など、まるで秘書のようにビジネスマナーが完ぺきだ」
ええ秘書ですから、と口を挟む間もなく、ジェットコースターのような小野さんの話は止まらない。
「それに美しい! 桜庭部長とお似合いです!」
えっ……本当に……?
私はポッと熱くなった頬に両手を添えた。やだ、この人失礼だと思ってたのに、すごくいい人じゃない……? その後も小野さんはペラペラとなにか言っているが、今の私の耳にはまったく入ってこない。お世辞という言葉を思い出せずに浮かれる私の横で、桜庭さんが「待ってくれ」と口を挟んだ。
「やめるんだ小野さん。失礼だろう、僕の婚約者の代役だなんて。これ以上、仁科さんに迷惑をかけるわけにはいかない」