Romantic Mistake!
桃香さんは着物になる予定だったのかと思うとますます気持ちが重くなっていくが、なぜか彼は赤くなり、じっと私を見つめる熱い瞳と目が合った。
「とても綺麗で、ドキドキしてしまって」
えっ。
予想外の言葉に、今度はこちらが熱くなる。
「桜庭さん……」
なんてことを言うのだろう。お世辞にしたって照れはひとつもないのかな。こんなにストレートに、外見を褒めてくれるなんて。
絶対にうちのボスなら「馬子にも衣装だな」とゲラゲラ笑ったに違いない。すごいな、桜庭さんって本当に、油断しているとうっかり好きになりそうだ。
「気を悪くしましたか?」
焦って覗き込んでくる彼に、首を横に振った。気を悪くするなんてとんでもない。うれしくて浮かれそうなくらいだ。これからこの姿で、彼の隣を歩くのか。自分で言い出したこととはいえ緊張する。
「屋上にはすでに招待客が来ています。僕は親愛を込めて麻織さんと呼び、敬語は控えさせていただきます。そちらも、僕のことは下の名前で、颯介と呼んでください」
「は、はい」
「じゃあ、麻織さん。ここからはきみは僕の婚約者だ。いいね?」
「はい……颯介さん」