Romantic Mistake!
扉の向こうに広がっていた和風庭園は白い生花が飾られ、和洋折衷なイメージの華やかな空間だった。日暮れの肌寒い空気に包まれているが、緊張の熱でまったく寒さを感じない。立食形式のご馳走に囲まれてほんのりライトアップされたロマンチックな演出に、華やかなゲストたちの服装、そして私のドレスもマッチしている。
拍手で迎えられながら、間を縫って主催席に立った。よかった、高砂があったらどうしようかと思っていた。それよりは少しライトな雰囲気でひと安心。
入って早々、「それではフィアンセのご紹介です」とアナウンスが流れる。私にスポットライトがあたり、笑顔が崩れないようにひきつりながら〝やめてー〟と心の中で叫んでいた。
「仁科麻織さん。桜庭部長の三つ年下でいらっしゃいます。大学で経済学をお勉強されたのち、皆さんもご存じの老舗靴メーカー、株式会社アサクラにお勤めの、頼もしいキャリアウーマンです」
私はポカンと口を開け、隣の颯介さんを見上げた。彼は笑顔で〝シー〟と人差し指を口にあてている。
たしかに控え室で私の経歴を聞かれた。しかしここでは桃香さんの経歴が読まれると思っていたのに、まさか私のがそのまま使われるなんて信じられない。