Romantic Mistake!
「きみは経歴も素敵だったから、なにも嘘をついてもらう必要はないと思って」
ふいに、颯介さんが肩を抱くふりをしてそうささやく。
「颯介さん……」
これまでの生き方を褒められると、外見やその場の行動を褒められるときとはまた違ったうれしさがこみ上げてくる。甘美な感覚にカクンと膝が崩れ、彼に支えられる。
しかし、ゲストからはちらほらと「なんだ普通のお嬢さんなんだね」と庶民であることを指摘する声がした。こちらとしてはハードルが下がってありがたいけど、これでは颯介さんの評判に傷が付かないだろうか。
颯介さん以外の意見も聞きたくて背後で立っている小野さんにちらりと目をやると、小声で「桃香さんに出てもらうよりは遥かに平和ですよ」と謎のフォローをしてくれた。たしかに、と私も納得する。彼女はここでもワガママな振る舞いをしたに違いない。
ホッとしたのもつかの間。挨拶が終わり歓談の時間に入った途端、最前列のダイヤのイヤリングの光る四十代くらいの女性が「ねぇ、フィアンセのお方」と私を呼んだ。いきなりで返事ができずにいると、すかさず颯介さんが「はい」と間に入ってくれる。