Romantic Mistake!

言葉が出ないまま立ち上がり、地にしっかり足をつける。彼はそんな私の姿を見て、顔の血の気が引いていく。

「コートが……!」

コート? そう言われて私も自分の白いコートに目を移すと、さすがにギョッとして「うわっ」と声が出た。胸元にベッタリとコーヒーが染みている。代わりに持っていた紙カップの方は空っぽで、すべてコートにこぼれてしまったのだとやっと理解した。これは、さすがにまずい。

「あ、あはは……大丈夫です、大丈夫」

冷や汗をかきながらとりあえず「大丈夫」と言ってみたものの、このコートのまま三日間過ごすつもりでいた私にはこの事態は計算外。到着してすぐコートを新調しなければとブルーになり、笑顔は引きつった。

「大丈夫ではないでしょう! まいったな、買い換えるまで付き添いたいですが、次の羽田行の便にどうしても乗らなければならなくて……」

彼は早口になりながら懐に手を入れ、黒の革財布を開く。そこから一、二、三とお札を三枚取り出し、私の目の前へ差し出す。

「これで足りるでしょうか。本当に申し訳ありません」

「え?」

お札の肖像画たちと目が合い、ギョッとした。
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