Romantic Mistake!
それからはスムーズにパーティーは進行し、私は何人かの社長さんたちとお話しして打ち解けることができた。こういう人たちとは仕事でよく話すから、ビジネスモードになればなんとか過ごせる。そのまま二時間後にパーティーは終わり、社長さんたちは私に手を振ってぞろぞろと帰っていった。
ようやく終わった。役目を果たし、ふうと息をつく。
「仁科さん。お疲れ様でした」
見送りを終えた私に最初に声をかけてくれたのは小野さんだった。彼は興奮気味に私の手を握ってブンブンと上下に振る。
「ちょっと、小野さんっ」
「最高でしたよ。これ以上の代役はいませんでした。社長たちを手玉に取り、マダムを黙らせ、ピアノも弾ける。桃香さんではこうはならなかった。最高の代役です」
「言い方!」
私がツッコミを入れたところで、繋がれていた小野さんと私の手に、颯介さんの手が割って入った。彼は小野さんの肩に手を置く。
「小野さん、お疲れ様。少し、麻織さんとふたりにして欲しいんだけど」
えっ。
小野さんは眼鏡を光らせ、「はい」と返事をし、すぐに庭園から出ていった。