Romantic Mistake!
「ごめんね、少しの間だから。途中でショップに寄って、もっと欲しいものを選んでいいよ」
「え、いやいや……」
コートを奪われて広げられ、あれよあれよという間に肩に通される。うわ、なんでピッタリなんだろう。そうか、昨日私のコートを預けたから、サイズがバレてるんだ。
「これも持ち帰ってもらえたらと思ったんだけど、いらないかな」
「え!? これくださるんですか!?」
「うん」
彼の手が私の襟を直し、詰まった裾をきちんと伸ばしていく。くれるつもりで用意したというなら、受け取らなきゃこのコートはお払い箱になるのだろうか。それならもらいたい。少しの間の繋ぎで着るようなコートじゃなく、私だったら十年、いや一生大切に着る。
「じゃあ、いただきます。でもほかにはなにもいりません。コートもずっとこれで十分ですから」
「そう?」
彼は「よかった」と笑った。朝から気を遣われ、思わぬプレゼントをもらってしまった。もしかしたらこれが颯介さんの普通なのかもしれない。桃香さんのときのように相手を甘やかし、どんな女性もメロメロにしてしまうのだろう。
朝早くからやっているビル内のホテルのモーニングへ連れられ、颯介さんは食事をしながら私に「北海道へ行きたい?」と聞いてきた。正直、私は彼と一緒ならどこでもいい。昨日からすでに、このベリーヒルズビレッジの中ですら小旅行のように感じている。
「いいえ。颯介さんについていきます」
誤解されそうな言葉を返してしまい変な汗をかきながら、私はパンを詰め込んで誤魔化す。モーニングを終え、私たちはさっそく出発した。