Romantic Mistake!

「癖?」

私は彼のことがもっと知りたくて、続きを促す。颯介さんは少し切ない顔をしている。

「子供のとき、桜庭屋がフランスに出店することになって、家族に連れられて三年間暮らしたんだ。その地域ではレディファーストが当たり前で、僕も女性に優しくしていた方が物事がうまくいくと気づいた。それからは、ずっとこんなかんじかな」

それでフランス帰り、なんだ。異国での振る舞いが染み付いて、女性に優しくするのが癖になっているなら、納得だ。

「でも、表面上の付き合いでは優しさは有効かもしれないけど、深い付き合いでは難しいね。なかなかうまくいく関係を築けない。桃香さんを見ただろう? 優しくすると相手がエスカレートしてしまうんだ。きっと僕のせいなんだろうね」

「颯介さん……」

私は納得してしまい否定できず、黙った。彼は女性の扱いがうまいように見えるが、本当はそうではないのかもしれない。それどころか、桃香さんのことを思い返すと、優しくしすぎて損をしている気さえする。

私が彼の恋人なら、そうはならないのにな。昨日みたいに、助け合うことの大切さは身に染みてわかっているつもり。颯介さんの優しさを欲しがるよりも、彼の力になれて「ありがとう」と言ってもらえたときの、あの満たされる気持ちが忘れられない。
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