Romantic Mistake!

「頼まれませんよ! 私、今日まで休みなんですからね?」

『東京戻ってからでいいから、俺の家のシャンプー買ってきておいてくれ。いつものメーカーの』

「え、なにそれお使いですか? 仕事じゃなくて?」

『そう。もうすぐなくなるから。ついでに詰め替えといて』

この人は!と腹が立ち、スマホに怒鳴り付けそうになったが、どうせ何度言ってもわからないためもうあきらめの境地に入っている。やってあげてしまうのが一番手っ取り早くて、体力も消耗しないのだ。

大きくため息をつき、いつもの「これっきりですからね」という返事をした。

『おう。じゃあ、明日からは出社しろよ。麻織がいないと俺は弔事用のネクタイがどこにあるかもわかんねぇんだから』

「だからそれは二番目のチェストだって言ってるでしょう! もしもし? もしもーし! 英一郎さん!」

ブツッと音を立てて通話が切れた。真っ暗になった画面を手に、私もキレそうになる心をなんとか静める。
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