Romantic Mistake!
* * *
身軽な荷物だけを持ち、颯介さんとふたりでベリーヒルズのある東京から山手線に乗り、新宿へやって来た。新宿の切符売場で箱根までのロマンスカーの切符を買い、少し離れた電鉄のホームへ向かう。彼は電車の旅がしたいという私の庶民的な望みを叶えてくれた。
「楽しみです」
「そうだね」
もう恥ずかしさよりワクワクする気持ちが勝り、自然に彼と腕を絡ませた。彼は昨日と同じ上質なコートだけど、革靴は少しエッジの丸い、動きやすいものに変わっている。颯介さんはお金持ちの御曹司かもしれないが、こうして並んで歩いているだけでとても楽しい。このままずっと一緒にいたいな、ぼんやりとそう思った。
「麻織!?」
しかし新宿の改札を出たとき、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「げ! 英一郎さん」
「げってなんだ、げって! お前なにやってんだよこんなところで。北海道はどうした」
スーツ姿で構内をウロついていたのは、今一番会いたくなかったボスだった。