Romantic Mistake!
黒髪のオールバックにストライプのスーツの英一郎さんは、私の隣に颯介さんがいるにも関わらず割って入ってくる。三連休なのに、こんなところで彼に会うなんて。
ボスのせいでさっき颯介さんを不安にさせたばかりだったため、勘違いさせていないかと彼の表情をうかがった。しかしボスが「義兄」だという事実は颯介さんににとってよほど安心材料だったらしく、笑顔で私に「彼がボス?」と尋ねてくる。
私は余裕がなく、「え、ええ」と乾いた返事しかできない。
「どうしても北海道に行きたいって言うから休ませてやったのに、なんで男と新宿にいるんだよ!」
「それはいろいろと事情があるんです! ボスこそどうしてまだ新宿にいるんですか。この時間はもう契約が終わって、オフィスに戻っている予定ですよね?」
スケジュールを暗記している私は、ボスの新宿での用事は二時間前に終わったはずだと知っている。ズバリ指摘すると、彼は明らかに口ごもり、様子がおかしくなった。
「それはまあ、俺もいろいろ」
泳がせた彼の視線を追いかけて、私はじろりと睨む。
「……怪しい。なにかあったんですか?」
「いやー、うーん……」
私は颯介さんを放置しているのが気になって時折視線を向けたが、嫌な顔はせず待ってくれているため、それに甘えた。今はとにかくボスがなにをやらかしたのか聞いてモヤモヤを晴らさないと、温泉でゆっくりできない。