Romantic Mistake!
「なんですかボス」
「今日親父と葬式行くんだった。取引先の社長が亡くなったって、昨日言われて」
「えぇ!? 何時ですか?」
「三十分後に親父と本社で合流するから、すぐに出なきゃダメだ」
今探していた棚のファイルをバサバサと落としたが、私は戻すのを後回しにしてクローゼットに掛けてある彼の礼服を先に出す。
「もう! なんで早く言わないんですか」
「忘れてたんだよ」
お葬式を忘れちゃダメでしょ!と怒鳴りたかったが、響かない人を叱る体力はもう残っていない。ああ、すでに印鑑を失くすという大問題を起こしているし、この三日間本当に大丈夫だったのだろうか。出社するのが怖すぎる。
ボスは礼服に着替え「後はよろしくな」と出ていった。取り残された私は呆然とし、ゴチャゴチャに散らかったオフィスに立ち尽くす。ひとりでもいいもん、ボスがいたって役に立たないし。むくれながら棚に戻り、作業を再開した。
「きゃっ」
散らばったファイルを戻そうとかがんだところで、またファイルが雪崩になって頭に落ちてくる。続いて転んでファイルの海に突っ込み、体を起こすと最後の一冊がまた頭に直撃した。
「いたたた……」
額を押さえて痛みに耐えているが、じわじわと涙が滲んでくる。なぜこんなに踏んだり蹴ったりなんだろう。