Romantic Mistake!
ふらっとよろけながら立ち上がり、力を振り絞ってオフィスを出て、ベリーヒルズビレッジの方向へと歩みを進める。
探し物で揉まれた私はボロボロになっており、髪は乱れて、颯介さんとのデートのために整えた服もシワになっていた。これであの巨大な建物の中、印鑑ひとつをしらみ潰しに這いつくばって探すのだ。もう、いろいろと悲しい。
「颯介さん……」
彼と迎えた優雅な朝は、こんなことになるなんて微塵も思っていなかった。今頃ふたりで箱根を満喫して、露天風呂に入っている予定だったのに。
「ううう……」
泣いていてもどうしようもなく、とにかくベリーヒルズへと走る。しかし走りながらも涙が止まらない。
颯介さんと離れたくなかった。彼との予定を潰してほかのことに没頭するなんて、私のしていることは桃香さんと変わらない。愛想を尽かされたって文句は言えないだろう。
こんなに颯介さんを好きになってしまったのに、選択を間違えた。優しい彼を一番に考えてあげることができなかった。