Romantic Mistake!


たどり着いたビルの前で、膝に手をついて「ハアハア」と息を整える。

探さなきゃ、と焦りと虚無感で意識が朦朧となりながら、一階のフロアへ入る。オフィスビル一階は、桜庭屋。大理石の広い通路の両サイドには、綺麗なバッグや上質な衣服のコーナーが並び、それぞれの店舗にプロのコーディネーターがいる。広いフロア内を歩いて見回すと、接客にあたる店員さんが歩いていた。

でも今日は少しだけ、店内が騒がしい。店員さんたちはいつもはもっと優雅なのに忙しそうだ。キョロキョロと落ち着かなかったり、時折、かがんで床に顔を近づけたりしている。

不思議に思った私は、彼らに近づいて様子をうかがった。

「あった? お客様の印鑑」

「ううん、ない。どこにあるんだろうね」

同僚と思わしき店員さん同士が話している。
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