Romantic Mistake!
さて、落ち着いてどうすべきか考えよう。職業柄、こういう頭の痛い展開には慣れている。冷静になれば大丈夫。
まず私。幸いスーツケースに入れていたものは着替えや化粧品だけで、財布やスマホなどの貴重品は手荷物として持っている。すべて現地で買い直したとしても、臨時収入の三万円があるから痛くも痒くもない。
そして、彼。中身はまだよく見てないけど、彼はこの荷物がないと困るだろう。羽田に到着するのはおそらくあと四十分ほど。そのときに気づいて真っ先に電話をかけるとしたら、この空港に違いない。
ならば答えは簡単だ。落とし物として空港のスタッフに預ければいい。きっと彼と連絡がとれれば郵送で届けるなり、別の便に乗せて羽田まで運んでくれるなりするだろう。知らないけど。
さあ解決だとばかりに立ち上がり、機械的にサービスカウンターへ向かおうとする。が、私は再度ストンと座った。