Romantic Mistake!

やがて彼女たちは通り過ぎ、見えなくなる。私はその場所から動けなかった。足が震えてペタリと座り込み、うるうると感動の涙があふれてくる。私のために、オフィスの皆が印鑑を探してくれている。

先約だった彼を駅に置いてきぼりにしてしまったのに、自分勝手な私を見放さないでくれた。なんて優しい人なんだろう。まだ私を好きでいてくれているのかな。

ついに泣いているところを女性の店員さんたちに見つかってしまい、彼女たちが「どうしたんですか?」と駆け寄ってくる。私は膝に顔を埋めた。耳に届く声が遠くなり、ひとりで幸せに浸る。もういい、印鑑が見つからなくても、私はこれだけで十分だ。

「麻織さん?」

頭上で声がした。この上品で柔らかな声、私をいつも労ってくれる颯介さんに間違いない。女性が売り場で泣いているという知らせが入ってしまっただろうか。感極まってグシャグシャの顔のまま、「颯介さん……」と顔を上げた。
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