Romantic Mistake!
いつの間にかギャラリーは増えていて、制服姿の店員さんたち、オフィスフロアから下りてきたビジネスマンたち、そして買い物中だったお客さんたちが輪を作っている。ああ、こんなスキャンダルを起こして、私はただでは済まないだろう。
「麻織さん」
少し顔を上げるのが怖くなり、名前を呼ばれても彼の胸に額をつけたままでいた。しかし颯介さんはクスッと笑みをこぼし、「ほら」と腕の中の私に手のひらを見せる。
「……え」
「印鑑。あったよ」
彼の手の上には、探していた象牙の印鑑がコロンと乗せられている。
「え!」
彼の手ごと食い入るように近づけ、今度は驚きの声を上げる。印鑑と颯介さんの顔を交互に見た。
「別のフロアの試着室で見つかったよ。着替えたときにポケットから落ちたんだろうね」
「う、うそぉ……」
「これで間違いない?」
彼に促されて私は手で受け皿を作り、そこに印鑑を乗せてもらう。印章には【株式会社アサクラ】と記されている。間違いなく、私が探していたボスの印鑑だ。