Romantic Mistake!

うるうると涙があふれてくる。印鑑がなくてもいい、そう言ったものの、大切な印鑑が手の中に戻ると、安堵で胸がいっぱいになった。

「颯介さん……!」

もう一度颯介さんの胸の中に抱きついて、周囲は気にせずわんわん泣いた。

「麻織さん。よかった、元気になってくれて」

彼は本当に安心したような声でそうつぶやいて、私の頭をなでながら「よかったね」とうなずく。もう全部、颯介さんのおかげだ。

ひとしきり涙が出尽くすと、やっとギャラリーに見られていることが恥ずかしくなる。颯介さんは私の背中を抱いて胸の中に隠すと、集まっている従業員たちに「みんな」と明るく声をかけた。

「ありがとう、無事に印鑑は見つかりました。皆さんのおかげです」

歓声と拍手が響き渡った。颯介さんの感謝と喜びのこもった声に、フロアの人々は皆、幸せに満ちた笑顔を向けあう。彼に抱きしめられながらそれを見て、私もオフィスの皆に心の中で「ありがとう」と言い続けた。
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