Romantic Mistake!
「いいえ。大切なものが見つかってなによりです。いらっしゃったお客様のためにご尽力するのが我々百貨店の仕事ですから」
さすが颯介さんだ。ボスですら包み込む寛容な彼に、こちらのトゲトゲした心も癒される。
「桜庭様がご配慮くださったおかげです。……それにその、うちの息子の秘書で義理の妹さんである麻織さんも、プライベートでお世話になっているようで」
社長は乙女のように頬を赤らめ、私と颯介さんを見比べる。どうして知っているんだろう。もしかしてさっきのビルでの出来事、もうネットで噂になってるのかな……。
「ええ。とてもよいお付き合いをさせていただいております。ね、麻織さん」
「は、はい」
お付き合い。ぼかしたような、ぼかしていないような。
すると、社長は私にも深々と頭を下げた。まったく予想していなかった事態に私は「えっ」と傍らのボスを見たが、彼はムスッとしてそっぽを向いている。
「麻織さんにも息子が迷惑をかけてしまったね。社員からも聞いているよ。いつも助けてもらってばかりで、麻織さんが休暇をとっていたこの三日間は大変だったって」
「ああ……いいんですよ、社長。お休みをいただけて十分です」
結局北海道へは行けなかったし、最終日もボスに潰されてしまったけど。