Romantic Mistake!

……本当に大丈夫だろうか。もし、彼がいつまでも荷物が入れ替わっていることに気づかなかったら? スーツだったし、出張帰りかもしれない。そのまま出社しちゃって、会社で荷物から女性ものの服や化粧品がぶわっと出てくるなんてことになったら……。

気の毒な想像ばかり思いつき、引き渡してハイサヨナラではこちらも旅行の気分になれそうにない。彼が地上に降りてすぐに連絡してあげられればベストなんだけど。

そうだ、なにか連絡先がわかるものが入っていないかな。あなたのためですから、と心の中で断りを入れ、「失礼します」と小さくつぶやき、パチンパチンとしゃがみこんでスーツケースを開いた。

再度中身と対峙し、何度見ても美しい収納にゴクリと息を飲む。靴、ネクタイ、スーツ、カフス。どれも几帳面に箱に入れてあるし、高そうなものばかりだ。

「これはなんだろう」

箱と箱の間に、折れないようにA4の茶封筒が入っていた。これだけどうして裸なんだろう。まあいいや、中を見ちゃおう。
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