Romantic Mistake!
「いや、それはっ」
中身を差し出されたが、私は思わず手の平で押し返した。正直、めちゃくちゃ興味はある。ユリウス編はボツになったのだから今後公開されることはないのだろうし、リチャードより絶対ユリウス派だった私としてはぜひ読みたい。……でも、こうしてズルして読むのはなんか違う気がするのだ。
「い、いいです。すごく好きな小説ですけど、勝手に読んだら作家さんに悪いですから」
「実はね、作家さんの希望なんだ」
私は首を振っていたのを止め、ピタリと固まった。それってどういうことだろう。颯介さんはいつの間にか私の手を開いて原稿を持たせると、離さないようにギュッと私の手を握る。
「作者が、ユリウス編の感想をとても聞きたがっていてね。まだ一般の人に見せたことがないから楽しみにしているんだって。僕の婚約者になら、ぜひ読んで感想を聞かせてほしいと言っているんだ」
婚約者。それは、パーティーのときだけだったはず。私は期待で胸の鼓動が止まらなくなる。
「これを読んで、来週一緒に北海道へ行ってくれないか。原稿を返して感想を伝えて、きみの北海道旅行をやり直そう」
それってーー。