アオハルの続きは、大人のキスから
プロローグ
プロローグ
初恋。それは、甘くも切ない初めての恋。そう解釈している。
秋の始まりを風で感じつつ、十年前の自身の初恋に思いを馳せてしまう。
高校三年のとき、当時大学二年生だったバイト先の先輩と付き合っていた。
自身にとっての初恋は、ちょっぴりビターテイストだ。
そのため今も尚、初恋の彼を思い出すたびに胸がチクチクと痛む。
いつか再会するときには、彼にあの日のことを謝りたい。そう願い続けて、早十年。
その願いは叶えらず、今日まで来てしまった。
母が亡くなり、すぐさま東京の叔父の家に行かなければならなくなった、あの日。
彼に理由を告げず別れを切り出した。
結局、幼かったのだ。自分の力だけでは、前にも進むことができない。
そして、遠距離恋愛ができる自信もなかった。なにより、母が亡くなりなにも考えられなかったのだ。これからの未来のことを……
それでも、幼いなりに全力で恋をしていた。十八歳、高校三年の秋。
泣きながら京都を離れた日、そういえば、あの日もこんな空の色をしていた。
今、勤め先である呉服店山野井がテナントとして入っているベリーヒルズビレッジのショッピングモール屋上にいる。
ここは茶会などが開かれたりする立派な日本庭園があり、催し物がないときは一般開放をしているのだ。とはいえ、モール開店前なので誰もいない。独り占め状態である。
突き抜けるような青空。キラキラと輝く太陽の光がちょっぴり眩しい。
きっと、彼はこの空の下。元気に過ごしているはず。そう信じていたい。
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