アオハルの続きは、大人のキスから


 ベリーコンチネンタルホテルは、このビルの四十九階にある。〝49〟のボタンを押し、椿から預かったメモ書きを見つめる。

 ホテルの名前と部屋番号のみ。名前などは書かれていないが、椿の話ではGMという役職の人が部屋で待っているはずだ。

 椿に先ほどGMについて聞いたのだが、教えてくれなかったので調べてみることにする。

「GMってホテルの総支配人っていう意味なの?」

 スマホで検索をかけると、GMはジェネラルマネージャーの略であり、総支配人のことを言うらしい。いきなりホテルのトップと話すことになるようだ。

 先ほどまでは、とにかく時間に遅れないようにしなくてはと気ばかり焦っていただけだったが、今になって緊張してきてしまった。

 時間がなかったために、椿からは詳しいことを聞けなかったことがますます不安を煽る。
 着物のことを話せばいいと彼女は言っていたが、具体的にはどういった内容を聞かれるのだろう。

 小鈴は、呉服屋山野井の店員として働いている。だが、会社運営だとか取引関係などは番頭である叔父、そして俊作が担っているので小鈴は携わったことがない。
 そんな小鈴がラグジュアリーホテル支配人と商談などできるのだろうか。

 今からでも遅くはない。俊作に代わりに来てもらった方がいいのでは……

 そんな考えが脳裏に過ったが、エレベーターは無情にもホテルフロントに辿り着いてしまった。


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