アオハルの続きは、大人のキスから
「ダメだ。俊作に小鈴は渡さない」
「なにを言っているのか、この男は。まだ小鈴はお前を選んだわけじゃないだろう? 返事は模擬結婚式が終わってからだと聞いているが?」
「どうして、それを……あ!」
なにか思いついたのだろう。久遠は苦々しい声だ。その声に反応した俊作はクスクスと上品に笑った。
「山野井の番頭から、聞いているが?」
「えっと、久遠さん? 俊作さん?」
色々と話が見えてこない。久遠の腕の中から顔を出した小鈴を見て、俊作はバックヤードを指差した。
「小鈴、スタッフルームに行っておいで」
「え?」
「蘭ときちんと話した方がいい。模擬結婚式まで返事をしないなんて悠長なことをしていれば、いつ何時私が小鈴奪回に動くかわからないぞ?」
「……俊作さん」
「私は元気に店に立つ小鈴が見たい。空元気なのは、見ていて痛々しい。早く胸の内を曝け出して、その男に伝えなさい」
小鈴の背中を押してくれる俊作。彼の気持ちが切ないものだと感じて、胸が痛い。
だけど、彼が色々な感情を抑え込んで背中を押してくれた。それがとても嬉しかった。
「店は今、お客様はいらっしゃらないから大丈夫。いっておいで」
「はい」
小鈴は久遠の手を掴み「ついてきてくれますか?」と聞くと、神妙な顔で頷いた。