アオハルの続きは、大人のキスから
「小鈴さん。まぁ、素敵よ。とってもお似合い」
「え? 如月さま?」
呉服屋山野井のお得意様であるマダム、如月がなぜここにいるのか。小鈴は目を大きく見開いて硬直する。
今日はベリーコンチネンタルホテルにて、模擬結婚式が行われる。花嫁役のモデルとして小鈴は朝から準備をし、先ほどようやく白無垢に着替え終えたところだ。
この白無垢は蘭家に代々伝わるもので、嫁いでくる花嫁に着てもらっているものらしい。
それを聞いただけで、このベリーヒルズビレッジを所有している旧財閥家ほどではないにしろ、蘭家が名家なのではないかと推測する。
だが、久遠の言葉を聞いて腹を決めた。
「この着物を着るのは、小鈴しかいないと思っていた」と久遠が真剣な眼差しで言ったからだ。
もし、久遠と別れたとしても、この先ずっと彼のことを好きなままなのだと思う。
久遠に会えない寂しさに耐えるよりは、家柄などの差で苦しむ方がましな気がしたのだ。
はっきり言って、開き直りだ。人間、開き直った方が勝ちである。