アオハルの続きは、大人のキスから
「仲濱さまのように素敵な女性にそう言っていただけると嬉しい限りです。ありがとうございます」
「い、いえ……」
小鈴と同じ、接客業に身を置く久遠。彼の接客の仕方はスマートかつ、人の心を和らげる力を持っている。
尊敬の念を抱いていると、久遠の足がピタリと止まる。そこは、どう見ても客室だった。
「え? ここ、客室じゃ……」
思わず辺りを見回してしまう。ここはどう見ても客室だ。そういえば、と小鈴は思い出す。
椿に手渡されたメモ書きにも部屋番号が書かれていた。では、この部屋で商談ということで間違いないのだろう。
この階はスイートルームばかりの様子で扉の数が極端に少ない。きっとどの部屋も広々とした造りになっているのだろう。
しかし、そのスイートルームだと思われる場所で商談をするのだろうか。通常、バックヤードにある会議室や応接間などで行われるもののはずだ。
「ここは、私が個人的に契約して借りている部屋となります」
「どういうことですか?」
久遠が個人的に借りている私室で、どうして仕事の話をすることになるのか。
小鈴の戸惑いに触れず久遠はカードキーを翳し、部屋のロックを解除する。扉を開くと、小鈴を中に招き入れた。
部屋に入ることを躊躇した小鈴だったが、目に飛び込んできた景色に感嘆の声を上げてしまう。