アオハルの続きは、大人のキスから
唖然としてそれ以上なにも言えず固まっていると、急に久遠が屈んで距離を詰めてきた。 驚いて目を見開いていると、その大きな手が小鈴の腕を掴んで引っ張り上げてくる。
「キャッ!」
強引に立たされて不安定な身体は、彼の腕に引き込まれてしまう。
驚いて見上げると、そこには相変わらず綺麗な顔があった。あの頃もすごく女性にモテていたが、今はその比ではないだろう。
大人の色気を醸し出し、尚且つこのホテルのGMだ。女性の影も絶えずあるはず。
しかし、この年齢でGMになるなんて、大抜擢だったのではないだろうか。それだけ、久遠は努力をし、ここまで上り詰めたのだろう。
綺麗な瞳の中に小鈴の顔が映っている。それを確認した瞬間、唇は彼に奪われていた。
「っふ……んん!」
強引なのに、触れる唇は優しい。何度も彼の唇が触れてくるたびに、十年前の甘酸っぱい記憶が戻ってくる。
十年という長い期間を埋めるような濃厚で情熱的なキス。彼と過ごした青春時代、そしてそのあとの十年の記憶が脳裏を駆け巡る。
小鈴が恋をしたのも、男性と付き合ったことも。キスをしたのも、なにもかも、全部。
身体の奥底に眠っていた恋の記憶。それが今、すべて解き放たれたようにも感じる。
ずっと強固な鍵を何重にもかけていた扉。それがいとも簡単に、彼の熱によって溶かされていく。
ガクガクと膝が震える。甘く溶かされた小鈴は、ようやく彼の唇から解放されたとき、身体に力が入らなくてしゃがみ込んでしまった。
久遠は跪いて小鈴と視線を絡ませ、十年前の記憶とは違う大人な笑みを顔に浮かべる。