アオハルの続きは、大人のキスから


久遠(くおん)さんに会いたいなぁ」

 どの面下げて会うつもりなのか。そう思うものの彼に会わない限りこの先、恋をすることができないように思う。

 あれか十年。二十八歳になった。

 一度だけ男性とお付き合いしたが、すぐに自分から別れを告げて終わりを迎えた。あのときの恋に勝る恋ができなかったからだ。

 結局は初恋を引き摺っている。自分から逃げ出したのに、なんて勝手なんだろう。

「久遠さん、元気ですか?」

 せめて、もう会うことができない彼の幸せを祈るだけは許してほしい。

 頬に当たる風は、心なしかセンチメンタルに感じる。結い上げている髪が一房落ちてきて頬を擽り、それを手早く直したあと店へと戻った。
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