アオハルの続きは、大人のキスから
「小鈴、お前に罰を与える」
「え?」
「あの日、小鈴に一方的に別れを告げられ姿を消されたあとから、俺はまともな恋ができなくなった。どうしてだと思う?」
「どうしてって……」
ずっと謝りたいと思っていた。だけど、まさか小鈴のせいで久遠がそんなことになっていたなんて思いもしなかった。
彼はモテる。すぐに新しい恋人なんてできると思っていたから、今の彼の発言には衝撃が大きい。
別れた当時、彼は大学二年生だった。詳しい進路は聞いていなかったが、会社勤めをする予定とだけは聞いていた。だが、その後の彼は知らない……
母が亡くなり数日後、彼に別れを告げた。小鈴は東京に行くことになってしまったし、なにより久遠は数年後大学を卒業して社会人となる。
心の距離も、物理的な距離もいずれできてしまう。そうなるのが怖くて、小鈴は一方的に別れを告げてしまったのだ。
当時、久遠が「理由を知りたい」と何度も聞いてきたが、それを無視して彼から逃げた十年前。
今になってああすれば良かった、こうすれば良かったなどと考えたりもしたが、ようするに当時の小鈴は自信がなかったのだ。
頭脳明晰、容姿端麗。そして、人の輪の中心にいる久遠が、小鈴とずっと一緒にいてくれるわけがない。遠距離で付き合ったとしても、いずれ別れを切り出される。それがわかっていたからこそ、小鈴から別れを告げた。
そう、傷つくのが怖くて、久遠にさよならを言われるのが怖くて逃げ出したのだ。
申し訳なさにギュッと唇を噛みしめていると、彼は小鈴に近づき耳元で囁く。
「その代償は、きちんと償ってもらうから」
「償い……?」
「そう、償いだ」
久遠は真摯な表情で、はっきりと頷く。