アオハルの続きは、大人のキスから
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「小鈴ちゃんは、どなたかいい人はいないの?」
「え? 私ですか?」
「そうよ、小鈴ちゃん。そろそろ自分の幸せを考える時期じゃないかしら?」
「そうなんですかね……。でも、私は山野井に骨を埋める覚悟でいますし、結婚なんてとても……」
「小鈴ちゃんはこの山野井にとってなくてはならない人。接客は完璧だし、着物センスもいいわ。今じゃ、貴女目当てでこの店に訪れるご婦人も多いんでしょう? それはわかっているけど。それと結婚は別。もしよかったら、私の甥っ子なんてどうかしらと思って。私、小鈴ちゃんと親戚になりたいわ」
このマダムは、ベリーヒルズビレッジ内にあるレジデンスに住んでいる。
詳しくは知らないが、なにやら由緒正しきお家柄のご婦人らしい。着物を日常的に着ている彼女は、この店の常連客である。
小鈴がここで働き出した頃からの付き合いで、小鈴のことをかわいがってくれるお客の一人だ。
最初こそ慣れない着物に四苦八苦していた小鈴だが、彼女のおかげでいっぱしに着物を着ることができるようになった。
今ではそのマダムに着物の提案をできるまでになったことは喜ばしいことだ。彼女も小鈴の提案を嬉々として聞いてくれ、今日も帯を買うことを決めていた。