アオハルの続きは、大人のキスから

「久遠がさぁ、花嫁役を探していたのよ。和服が似合う、写真映えする大和撫子を。そこでピンと来たのが、小鈴だったってわけ」

「私のどこが大和撫子?」

「小鈴は自己評価が低いけど、立派な大和撫子よ? 着物のセンスは抜群だし、着物姿も堂に入っていて素敵だもん。お父さんも言ってたわよ、お得意様のマダムたちが絶賛しているって。小鈴ちゃんに着物を選んでもらいたいってよく言われるらしいわ」

 それは素直に嬉しい。だが、それとこれとは話が別だ。

 なにより、山野井の仕事ではないのにどうして小鈴が花嫁役を引き受けなくてはならないのか。椿にそう抗議をすると、テヘペロと戯けた態度で返してきた。

「久遠は着物に慣れた女性を探していたんだけど、全然見つからないって言うのよ。友人として手を貸したいじゃない」

「そうかもしれないけど!」

「それに、小鈴だって久遠に会いたかったでしょ? いい口実ができたじゃない。一石二鳥ってやつだと思って速攻OKしたの」

「……」

「小鈴の元彼、久遠で間違いないんでしょ?」

「……うん」

「それなら、問題ないわ。さっさと謝ってさ。で、罪滅ぼしじゃないけど模擬結婚式で花嫁役やって過去のことチャラにしてもらいなさいな。そうしないと、いつまで経っても前に進めないわよ」

 椿の言うことはもっともだ。そして罪滅ぼしというワードで久遠が言っていたことを思い出す。

 久遠は恋ができなくなったのは小鈴のせいだ。だから、罪を償えと言っていた。それは、この模擬結婚式での花嫁役のことを指していたのではないか。

 それならすべて納得がいく。キスをしてきたのはきっと私を揶揄いたかっただけ。本当の目的は模擬挙式のための花嫁役のことだったのだ。



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