アオハルの続きは、大人のキスから


 久遠から来たメールを開くと、明日の同じ時間に、同じ部屋に来てほしいという内容だ。

 それを承諾した旨をメールで送り返すと、再び久遠からメールが届いた。

 なにが来たのだろうとメールを開いて、カッと頬が赤くなる。そんな小鈴の変化に、すぐさま椿が気がついた。

「んん? 久遠からの返事、なにかドキドキしちゃうようなこと書いてあったの? 見せて、見せて!」

「椿ちゃんはお酒の飲み過ぎ。よくないよ」

 椿が持っていたグラスを取り上げると、彼女はソファーにゴロリと寝転んだ。これはもう、寝る体勢だ。

「椿ちゃん。ソファーじゃ疲れ取れないよ? ベッドに行こう?」

「んー、わかってるぅ」

「全然わかってないよ、椿ちゃん」

 すでに寝落ちしてしまった椿を見てため息を盛大についたあと、メイク落としシートで椿の化粧を取ってやり、寝室から布団を持ってきて彼女にかける。

 いつものこととはいえ、こんな調子では椿のことが心配で仕方がなくなる。外でも同じようなことになっていないか。考えただけで不安だ。

 椿はよく小鈴のことを子供扱いしてくるが、彼女もこういう面では子供だと思う。

 はぁ、と深くため息を吐き出したあと、もう一度久遠からのメールを確認する。

『白無垢、必ず着てもらうから』

 このメールを見たとき、一瞬だけ彼の本当の花嫁に乞われているのかとドキッとしたが、すぐに落ち着くようにと自分に言い聞かせる。

 久遠はただ、模擬結婚式のための花嫁役を探しているだけ。それなのに、勘違いも甚だしいだろう。

 久遠の隣に立ち、花嫁になるのは小鈴ではない、別の女性だ。そう考えるとチクリと胸の奥が痛む。

 だが、小鈴に切なくなる資格などない。彼との縁を一方的に切ったのは、自分だからだ。
 小鈴はそのメールに返信せず、そのままアプリを閉じた。


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