アオハルの続きは、大人のキスから
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* * *
「本当に……小鈴だった」
数時間前。この部屋を慌てて出て行った彼女の後ろ姿を思い出す。
その姿を思い出すたびに、幸せな気持ちで胸がいっぱいになる。
先ほど小鈴からメールが届いた。恐らく、椿が一枚噛んでくれたはず。そうでなければ、先ほどの彼女の挙動不審ぶりを見る限り逃げ回るのがオチだっただろう。持つべきものは、幼なじみだ。
今日は小鈴が逃げてしまったので詳しいことを話せなかったが、恐らく椿の方から概要を聞かされたことだろう。
明日もう一度会う約束を取り付け、最後に『白無垢、必ず着てもらうから』と伝えた。
さて、小鈴はどっちの意味で取るのだろうか。
模擬結婚式の花嫁役としてなのか、それとも久遠の花嫁としてなのか。
もちろん、両方の意味で伝えたのだが……彼女はどう思っただろう。
小鈴とのメールのやり取りを済ませ、逸る気持ちを抑えつつ白無垢を見つめた。
小鈴の居場所はわかっている。今、慌てなくてもいいだろう。
深く息を吐き、とにかく落ち着けと自身に言い聞かせた。
まさか、小中高と同級生だった椿の従妹が小鈴だったとは。世間というのは、結構狭いものだ。
ひと月前に行われた同窓会の夜。久々に再会した椿に「結婚しないのか」と問われ、酒の勢いで「初恋が忘れられない」と呟いたのがきっかけだ。
「私の従妹も初恋が忘れられなくてさぁ。あんなにかわいいのに、恋ができないなんて可哀想なのよ。よさげな男に声をかけられるのよ? だけど、ぜーんぶお断りしちゃうんだよねぇ」と椿は深くため息をついた。