アオハルの続きは、大人のキスから
あの頃、まだ未成年だった小鈴。それに、久遠も親に学費を出してもらっている身分。二人は大人の庇護がなければ、生活するのも難しい状況だった。
だからこそ、小鈴が取った道は正しいと思う。彼女が幸せに暮らすためには、大人の力が必要だったからだ。
そして、離ればなれになったうら若き二人が恋をするのは並大抵のことではない。だからこそ、小鈴が選んだ道を否定はできないし、責めることもできなかった。
本心を言えばなんとかしてやりたいと思ったが、自立して大人になっていない以上、彼女を迎えになど行けないだろう。
そして、もぬけの殻になってしまった久遠が逃げた先は、仕事だ。
大学を卒業後、京都にあるベリーコンチネンタルホテルで二年働いたのち、海外の有名ホテルを渡り歩くことになる。
自分の手で、自分の力でトップに立ちたい。それしか頭になかった。
小鈴のことを忘れようと、他の女と付き合ったこともある。
だが、恋人になった女性にキスをする寸前、どうしても小鈴のことを思い出してしまってキスひとつできない。もちろん、それでジ・エンド。
久遠は小鈴以外の女を受け付けなくなってしまった。そして、同時にそんな欲さえも生まれなくなったのである。そう、小鈴じゃなければ誰もいらないと。
そうなった久遠に残されたのは、やはり仕事しかなかった。
そうこうしているうちに、あれから十年が経ち、ホテルマンとしてのスキルを得た俺はベリーコンチネンタルホテルTOKYOのGMとして招かれることになる。
数年ぶりの日本。小鈴がいるであろう、母国。この地に降り立ったとき、真っ先に浮かんだのは小鈴のことだった。こうなると苦笑いするしかないだろう。
小鈴のことだけを想い、生き続けるしかないのだろうと覚悟を決めたときに椿との再会。そして、小鈴の居場所を掴んだ。
白無垢に手を伸ばし、これを着た彼女を想像する。この白無垢は蘭家に伝わる由緒正しきもの。蘭家に嫁ぐ女性に、代々着てもらっている白無垢だ。
これを見て、目を輝かせる小鈴はとてもかわいかった。