アオハルの続きは、大人のキスから
お姫様なんて言われるのは、久しぶりだ。もちろん、十年前に久遠が小鈴に対して言っていた愛称だ。とはいえ、この愛称が出るとき、それは――
「一緒に朝を明かした日に、な」
小鈴が恥ずかしがって息を呑むのがわかったのだろう。久遠は低く甘い声で囁きながら、ミルクと砂糖を入れたコーヒーを差し出してくる。
「もう一度、お前をお姫様扱いしたいんだけど?」
「揶揄わないでください。……お仕事のお話しをしませんか?」
部屋の中に甘い空気が充満していることに気づき、小鈴は慌ててそれらを払拭させようとした。
だが、久遠はそんなつもりは毛頭ないようだ。ソファーは大きくて座るところなんてたくさんあるのに、わざわざ小鈴の隣に腰を掛けてくる。
「近い、ですよ? 久遠さん」
「それはそうだろう。今から小鈴とビジネスの話をするんだ。近くにいないと話し合いなんてできないだろう?」
「こんなに近くにいなくても、できると思いますが……」