アオハルの続きは、大人のキスから


「そうじゃない」

「え?」

「もちろん、模擬結婚式については小鈴にお願いしたいと思っている。こんなに着物が似合い、凜とした女性はどこを探してもいないからな」

「なにを……」

 顔が熱くなる。どうして久遠はそんなことを言うのか。それも、こんな逃げることができないほど密着した体勢で。

 それ以上の言葉を口に出せない小鈴の頬に、久遠は手を伸ばしてゆっくりと撫でてくる。

「小鈴には模擬結婚式の花嫁役と、もう一つお願いしたいことがある」

「なにを……ですか?」

 これが償いになるのなら、引き受けたい。そんな気持ちで問いかけると、久遠は真剣な眼差しで口を開いた。

「俺と、もう一度恋をしてほしい」

「っ!」

 一瞬、なにを言われたのかわからなかった。だが、ジワジワと彼の言葉が心に染み渡ってくる。それと同時に胸の高鳴りが最高潮にまで達してしまう。

 それが久遠に伝わったようで、彼は嬉しそうに頬を緩める。

「小鈴、ドキドキしているな?」

「だ、だって……」

 こんなこと言われたら、誰だってドキドキしてしまうだろう。

 それも、ずっとずっと大好きだった人から言われたのだ。小鈴でなくても、嬉しくて舞い上がってしまうはず。

 久遠に押し倒されている状況では、身動きはできない。視線を泳がせて動揺を伝える小鈴に、久遠は嬉しそうだ。

「俺のこと、意識してドキドキしてる?」

 そんなのは当たり前だ。こんなふうに押し倒された時点で意識せずにはいられない。

 その上、もう一度恋をしてほしいなどと言われれば、心臓なんていくつあっても足りないだろう。


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