アオハルの続きは、大人のキスから

「事情は後で話すから」

 強い口調で言われてしまい、なにも言えなくなる。

 慌てて振り返ると、久遠が呆然と立ち尽くしていた。そんな彼に誤解を解くことを許されず、俊作に無理矢理店舗のバックヤードへと連れて行かれる。

 パタンと扉が閉まったと同時に、小鈴は俊作に抗議した。

「どういうことですか? 俊作さん。どうしてあんなことを」

「……ねぇ、小鈴。どうしてそんなにむきになるんだ?」

「え?」

「別に蘭に誤解されても問題はないはず。お前と蘭は、ビジネス関係だけなんだろう?」

 鋭い視線で、小鈴のなにもかもを見透かそうとしてくる。

 もしかしたら、椿から話を聞いていたのかもしれない。元彼と会っている小鈴を、俊作はきっと心配してくれたのだろう。

 これ以上俊作に本当のことを隠しておけない。ますます心配をかけてしまうだけだ。小鈴は小さく息を吐いたあと、俊作の質問に答えた。

「蘭さん……久遠さんは、京都にいるときに付き合っていた人です」

「京都にいるときに……? そういえば、蘭は京都の大学に進学した記憶が」

「はい。大学生の久遠さんとお付き合いしていたんですけど。母が亡くなったのを機に東京に来ることになって」

「それで、別れた、と。で、十数年ぶりの再会を果たしたということか?」

「……はい」


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